2025/11/24 19:41

「ホオミドリアカオウロコインコの色の糸も出される予定はありますか?」
聞けばプレゼントしたい相手が飼育しているインコさんの色で、セーターを編みたいとのこと。
とても嬉しいお申し出に心が踊り、すぐにオーダー枠を作りました。
早速ご注文いただきお送りいただいた写真を元に、ホオミドリアカオウロコインコのノーマルとシナモンの制作が始まりました。
鳥さんの色の再現はこれまでも他の鳥さんでしてきたこと。
そう難しくはないと思っていたのですが、自分が「どこまでこだわるか」は未知数でした。
少量で糸を染め、「これだ」と思える色に到達するまで何度も染料を作ります。

(ホオミドリウロコインコ ノーマルの尾羽と背中の羽の再現を試みているところ)
私がこだわりたかったところは
・糸だけをみて、その鳥を想起できるか
・その糸でなにかを編んだときに作品として映えるか
です。
だから、できる限り本物に近づけつつも、
彩度をあわせたり、白を多く入れたり、色の順番を変えたり、色々と調整をしています。
(オーダーに限らずどの鳥さんでも)
とは言え、鳥さんの色というのはある程度の中央値はあれど、個体差が必ずあります。
だから「だいたいこの色」という染め方を通常ではしているのですが、オーダー品はそうではなく「この子の色」というのがあるので、ゆらぎの幅が狭くなります。
その分難易度がぐっと上がりますが、同時にクリエイターとしての意地やら矜持やらがむくむく膨らみます。
最終的に納得のできるものをかせに染め上げ、お客様に確認し、ご納得いただけたら本番です。

(実際にお送りしたサンプル)
あとは染めるだけなんですが、まだ難関が残っています。
これは今後の課題でもありますが、試し染めで作る染料は少量なのです。
それを本番の糸のボリューム分染める必要がありますから、数倍用意する必要があります。
ちょっと内部事情をお話すると、染料というのは元となる水性染料を0.1ml単位で調整して配合を決めています。
「オレンジを作るには赤と黄を何:何の比率で」という具合に混ぜるのですが、鳥さんの羽の色はとても複雑で、特にダークな色は「これは何色」ってひとことで表せなかったりします。
光の加減で青にも緑にも見える。
っていうのはおそらく、表面に見える羽と、奥の方とで色が違うから。
羽ばたく前、寒くて膨らむとき、晴れの日、曇りの日、厳密には全て違う色に見えます。
つまり、それを再現するのにまずは少量でテストして、その微調整した割合を全てメモしておいて、たくさん作りたければ掛け算すればいい。
と思えば、それがそうとも行かないのです。
今度は染料によって色が出やすい・出にくいがあります。
単純計算で増やしても、何故か同じ色にならなかったりします。
だからそれぞれの染料のクセを掴んで、調整します。
だからそれぞれの染料のクセを掴んで、調整します。
そこはもう感覚だよりです。
また少量を染めて再現できるまで調整して、納得できてから全量染めます。
こうしてできたのがオーダー品第一号です。

オーダーをくださったお客様にも言っていただきましたが、いただく対価以上のカロリーは使っていますね(笑)
でもこれを手に取ってくださったお客様の喜ぶ顔、ずっと眺めていられると言っていただいたお言葉や、それを元になにかを作ってまたさらに誰かの喜ぶ顔につながる。
それはお金じゃ買えないです。
私の悪いところですが、それがあるだけで頑張れちゃうんです。
(とは言え、継続するためにも報酬はいただくべきだと思うので価格は適宜見直します)
かなり赤裸々に語りましたが、オーダーに興味を持っていただいた方や、「どうしてもこの鳥と同じ色の糸でなにかを作りたい」という情熱を持って、「ことりいと」を知ってくださった方には、私の考えや創り方を伝えるべきだと思って書きました。
最後に、今回のオーダーでホオミドリアカオウロコインコの魅力に気づかせてくださったお客様に感謝を。
そしてまだ私が知らない鳥に出会えることを願って。

